………緊張する。
ネクタイが結べない訳では無い。
なのに、無意識に指先が震え出して……。
幅の狭いスリムタイをチョイスした彼。
私は迷う事無く、
トラッド結びの王道『プレーンノット』を結び始めた。
大点と小点の結び目を合わせ、クルリと1回巻いて……。
震える指先を何とか鎮め、何とかディンプルの形を整えた。
そして、最後は首に合せネクタイを滑らせる。
広々とした専務室に彼の声が響く中、
ドクンドクンと音にならない音を立て私の心臓が暴れていた。
襟を折り、彼から少し離れると、
彼は徐に卓上のメモ用紙に何やら書き始めた。
――――――――――
悪かったな
俺の車で帰ってくれ
俺はアイツの車で帰るから
――――――――――
今日は彼女の車でデートらしい。
私の帰りの交通手段を気遣っての言葉。
別にバスで帰っても問題ないんだけど、
逆らう勇気もなく、お言葉に甘える事にした。
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承知しました
有難うございます
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通話しながらメモを取る器用さに感心しながらも
一応、最低限のマナーかと思い、お辞儀した。
すると、



