ミラー越しに彼女が憤慨している様子が見て取れたが、
今は敢えて触れない方が良さそうだ。
一先ず、素早く立ち去るように車を走らせた。
大通りに出て暫く車を走らせていると、
「自宅へ」
「………はい」
やはり、会社には戻らなくていいんだ。
まぁ、大体は察してたけど………。
自宅への道のりはお互いに終始無言。
別にそれは嫌では無かった。
だって、さっきの方が何倍も空気が悪かったから。
彼女が居た時よりマシって、どういう事?
彼が無口なのはいつもの事。
だから余計にそう感じてしまったのかもしれない。
自宅マンションに到着。
リビングを通過し、部屋へと向かう足を止めた彼。
「悪かったな、嫌な思いさせて」
「へ?」
「アイツには女将がタクシーを呼んでくれたから、心配するな」
「………はい」
「それと」
「…………………はい?」
「何でもいい。軽く食べれる物を頼む」
「あっ………はい。直ぐにご用意します」
彼はそれだけ伝えると、自室へと姿を消した。



