「申し訳ございません。そちらの大倉様が、専務と約束済みとおっしゃられるもので……」
2人の顔色を窺いながらそう口にすると、
「京夜さん、私、言ったわよね?迎えに来るって」
「え?…………あ、あぁ」
京夜様はさり気なく彼女の腕を解き、
ジャケットのボタンをゆっくりと留めた。
その表情はどこか、困ったようにも見て取れたのだが……。
だが、彼女の言葉を否定しない所を見ると
彼女の言った事は本当らしい。
曖昧ではあるが、彼はきちんと肯定したのだから。
『女』を毛嫌いしている彼が、
事もあろうか、女性と待ち合わせ?!
これは一体、どういう事なのだろうか?
私の脳内は軽くパニックを起こし始めていた。
この部屋へ来る途中、
さり気なく情報収集していた私。
だって、事前に何の知らせも無いのに
専務室へお通ししたら、
天罰ならぬ魔罰が下りそうだもん。
せめて、名前くらいは聞いておかないと……そう思った。



