「秘書の分際で時間を取らせるんじゃないわよッ!!」
「ッ?!」
大理石と強化硝子で囲まれたロビーは、思った以上に声が響く。
甲高い彼女の声と野次馬の如く足を止める社員達の好奇な視線が容赦なく突き刺さる。
これ以上ここにいてもいい事なんて一つもない。
返って変な噂が立ち兼ねない。
それならいっその事、専務室へお連れして、
京夜様がこの女性と約束してないと言ったら、
その時に追い返せばいいか……。
言葉で通じなくても、私には拳がある。
いざとなれば腕づくで追い払うまでよ!!
「申し訳ございません。では、専務室へご案内致します」
気分は最悪だけど、任務中だから100歩譲って頭を下げた。
「フンッ!最初からそうしてればいいものを」
カチンとくる捨てゼリフを忘れない所をみると、相当性格が歪んでいるようだ。
カツカツとヒール音を響かせ、私の後を付いてくる女性。
高級フレグランスの香りを靡かせ、
すれ違う社員の視線を当然と言わんばかりに軽くあしらう。
ガラス越しに映る彼女の顔は、
先日パーティーで見た時とは別人に思えた。



