「カナダへ帰る前にまた会ってくれますか?」
「………あぁ、いいよ」
「私が………会いに行ったらご迷惑ですか?」
「へ?」
「お仕事が終わりそうな時間に会社まで迎えに行きます」
「会社に?」
「はい。その方が1分でも長く一緒に居れるでしょ?」
「ッ?!…………そうだな」
「では、連絡しますね?」
「あぁ」
俺は頷きながらシートベルトを外し、車の外に出た。
彼女も車から降りて、俺の方に歩いて来た。
「ん?何か、言い忘れた事でも?」
「いえ」
「ん?」
彼女は俺の目の前まで来て、ジッと俺を見上げている。
「ん?………どうした?」
彼女が何を言おうとしているのか解らない。
ただ黙って彼女の言葉を待っていると、
「今日は本当にありがとうございました。デート、とても楽しかったです」
「へ?」
「こんな日が来るなんて思ってなかったから……」
ハニカミながら俯いた彼女。
俺は彼女が口にした『デート』という言葉に硬直していた。
―――――今日のが『デート』??