「何してんの?」

「練習」

「何の?」

「モテ女の」

「モテ女?」

「ん」



そう口にした朱夏は、視線を美女にロックしたまま

普段はしないような仕草を始めた。

恐らく、彼女の真似をしているのであろう。



「何の為に?」

「だから、モテる為に」

「はぁ…」


だよね?

モテ女の仕草を真似してるんだから、そりゃそうだ。



朱夏は、指先を顎のあたりに軽く当て

相槌を打つように『うんうん』と頷き、

横髪を耳に掛けながら、その指先はそのまま長い髪を軽く撫で

柔らかい笑みを浮かべたかと思えば、

急に目を見開いて驚いた様子になったり。



目の前で繰り広げられる状況が実に面白い。



「飽きないの?」

「うん」


朱夏は至って真剣なようだ。



すると、


「あっ、帰るみたい」

「へ?」

「男性が席を立った」

「?!」

「女性も」


一挙手一投足を眺めている朱夏のナレーションに

私も思わず振り返ってしまった。