松波がドアノブを開けたと同時に

俺は奴の行動を遮った。


俺の左手がドアノブを握る松波の手に覆い被さる。

そして、右手で思い切りドアを押し返す形に……。


突然、行動を制止させられ

威圧感抜群の俺様の声が耳に届き

不覚にも背後を取られた上、

大パニックで思考が停止したであろう……松波。


今まで、隙という隙が全く無かった為

このような絶好のチャンスなど訪れた事が無い。



俺は余裕の笑みを浮かべ、

ゆっくりと右手をドアから奴の右肩へ下ろした。


そして、スローモーションのように

ゆっくりゆっくりと奴の耳元へ。



「天気も良いし、楽しんで来いよ」

「ッ?!!!」


ビクッと身体を震わせ、そのまま硬直。

フフフフフフフフッ……。

想像はしていたが、実に面白い。

気が動転しているであろう今、

化けの皮を剥ぐのは容易いが、それではつまらない。


楽しみは後にとっておくものだ。


俺は松波の肩を軽く叩き、その場を後にした。


――――――――至ってクールに。