実家で夕食を済ませ、

マンションへ戻った俺ら。


「おい、松波。ちょっと来い」

「はい?」


松波をリビングへと呼びつけ、


「明後日、女友達と逢うんだろ?」

「あっ、はい」

「じゃあ、これで何か買ってやれ」

「へっ?」


俺はテーブルの上に現金を置いた。


「何かって、これは多すぎます」

「庶民の感覚が分からないから、適当に用意した」

「でも……」

「じゃあ、好きなだけ持って行け」

「………はい。では、お言葉に甘えて」


松波は渋々といった表情で

数万円程度、手に取った。



「それと、これは仕事用の新しい携帯だ」

「へっ?」

「短縮1番に俺の番号が入っている」

「………」

「取引先の番号等も入れてあるから、今日からコレを使え」

「………はい」

「何だ、不服か?」

「あっ、いえ。自分、機械音痴なので」

「フフッ。今どき、ガキでも使いこなすぞ?」

「ッ!!………努力します」


松波は新しい携帯と睨めっこしながら

キッチンへと向かって行った。



―――――全ては、俺様の仕掛けた罠とも知らずに。