「それもそれで嬉しいんですけどね」

「そうなんスか」


自然と隣について話すことができた。その距離は、腕を伸ばして届くくらい。



「自学という名のおしゃべりしてたら、こんなになっちゃって。もう少し早く出れたんだけど…耳があつくて」

「耳?」


分かるかな? とつぶやきながらマフラーを下にずらす千代留さん。


数本の髪の束がはらりと落ちてきた。半分隠れていた顔と耳が白い光の外灯に照らされる。


「赤いでしょ、あついんです。これが」


髪からチラチラと見える左耳は、うっすらと赤く染まっていて。熱を帯びていそうで。


ぴと、