姫には二人の守護者の他に二人のメイドがいる。




黒耳に長い尻尾の半獣。
メル。






長い白耳に短い尻尾の半獣。

フラ。






二人はひそひそ話をしていた。
「伯爵様も大会に出るのかな?」





「それはないよ。姫様を護衛しなきゃならないから。」





「もったいない。弓の腕も凄いのに。」





「「確かに。」」






噂好きのメイドはひそひそ話していた。
もちろん半獣の二人の憧れは…。バルト伯爵だ。





「それにしても伯爵様も姫様には敵わないねぇ。」





「確かに。」






「やっぱり育ての親は子には弱い?」






「うーん。」






二人は乳母姿の伯爵を想像してしまう。






「きゃ!」
「そんな伯爵様もいい!」






きゃぴきゃぴ盛り上がっているメイド二人。






「楽しそうだね!」






「「姫様!」」






慌てて二人の口に手を当てる。
「しっ!バルトに張れるでしょ?!」






「姫様それは?」






「曲者ごっこ。黒ずくめで闇に紛れて逃げるとこ。」





二人はひそひそ。
「きゃは!」
「面白そう!」






「一緒に来る?」






「「はい!」」






「じゃあ厨房へ潜入よ!」





「「きゃは!」」






一人と二匹のメイドが廊下を走る。






その後ろを見送る守護者。
「行ってらっしゃい。」
と優雅に手を振るルゼ。





「しょうがない。まったく。」






息抜き…。が早すぎる。





ばれてないと思っているのかわからない。






クスクスと笑うエルフ。
「可愛い子には旅をさせろというではありませんか。」





「自由奔放ともいえるな…。」





忠犬の悩みはつきなかった。