高校生活2年目を迎えた俺は、

始業式の前日に不幸にも足を骨折し、入院した。

マジでツイてねぇ。

行事の多い4月は何かと忙しく、

最初の1週間以降、

誰も見舞いに来なかった。

そんな退屈な入院生活を終え、

2か月ぶりに登校する俺。

心新たに、逸る気持ちで2年の教室へ。

1年からの持ち上がりのクラスは、

場所は違えど和やかな雰囲気で……。


「おっ、嶋田じゃん、久しぶり~今日から?」

「おぅ、今日から。またヨロシクなぁ」

「おぅ!」


お互いに握り拳をゴツッと合わせ、

2か月ぶりの自分の居場所に安堵した。

その後も仲の良い男友達と

久しぶりの会話を楽しんでいると、ふと視線の先に。


「なぁ、銀河。アイツ誰だっけ?」

「ん?あぁ、アイツか?確か、こういう字だった気が…」


親友の銀河が机に指で名前を書く。

茂…木……楯?


「ん?……もぎたて?」

「もぎじゃ無くて、もてぎだよ」


へぇ~、もてぎって言うのか、アイツ。

1年間も同じクラスだったけど、全然覚えてねぇ。

マジであんな奴……いたっけ?


「ってか、今時あんな魔法使いみたいなコート着るか?普通……。しかも、5月で」


俺が教室に入って来た茂木を

冷やかな目で見ていると、


「アンタの方がよっぽどセンス無いと思うけど?」

「あぁ?」


幼馴染の由里が口を挿んで来た。


「アレ、今流行りのマントコートだよ。知らないの?」


小馬鹿にしたように言われると腹が立つ。


「何だよ!アイツの名前、“もぎたて”だぜ?」

「フッ、アンタってホントに馬鹿丸出し」

「あぁ?」

「茂木楯って書いて『もてぎ じゅん』って読むんだよ」

「ッ!!」

「アンタの弥吉郎って名前より、全然マシだし」

「うっせーよ!!」

「弥吉郎なんて名前、大好きな彼氏でも絶対、人前で呼べないもん!」

「ッ!!」


由里は冷笑を浮かべ颯爽と女子の輪の中へ。

“弥吉郎”なんて名前、俺だって死ぬほど嫌なのに!!

クソッ!!

両親を一生恨んでやる!!


だって、俺の……初恋が………。


~FIN~