「お嬢様、いかがなされなしたか?」
いつもならすぐに「ただいま」と返すはずが、返せていなかった私を心配した溝口。そんな彼の顔を見て、すぐにいつもの私を取り戻した。
「明日から、家政婦さんたちの出迎えいらない。中で待つ人も。」
「承知いたしました。」
(今日は怒鳴られる前に逃げよう。)
家政婦さんたちに「ただいま。」と返して家に入ると、お母様が2階からおりてきた。
「おかえりなさい。高城先生のところに行くとは聞いてたけど、こんなに遅くなるなんて。どこかいってたの?」
やはり機嫌が悪いお母様は、腕を組んで、心配していますオーラ全開で私の前に立った。
その態度と話し方に、さすがの私でも今日のこの精神力では、このままここでお母様と話したら、怒りを抑えることができそうにない。
「奥様、茉莉さまが着替えてからお話を伺ってはいかがですか?」
そう溝口が冷静に言うと、お母様は溝口を睨みつけた。
「あなたは黙ってて。今は茉莉と話しているんです。」
このままだと、溝口が今回の矛先になってしまう。
それは何としてでも阻止しなくては。
溝口が口を開く前に、私がお母様に言った。
「あとで溝口の日誌を見て、私の一日のスケジュールを確認してください。そしたらぜんぶわかるから。」
溝口はお父様の指示でいつも、私の一日のスケジュールを細かく日誌につけている。
それを確認すれば、どこで何をしているか一目でわかるようになっている。
日誌の存在を思い出した私は、普段通りの口ぶりで言った。
だが今のお母様には、逆上させる発言になってしまった。
「あなたの口から説明しなさい!なんでそんなことを、私が確認しなきゃいけないの。あなたから聞けば済むことでしょ。」
(そんなことって思うなら、はなから質問すなっ!)
お母様の怒りはもうすぐマックスだろうが、私のイライラの方が先に達していた。

