それでも、口を開くのをやめない秘書に
家の扉を開けるまでと言って着いて来る。
じいちゃんからの命令だと言うけど、
この人が喋ってることはじいちゃんの命令なのか?
『知っていますか?一ノ瀬は日本では5大名家に入る
屈しのお家柄、その財力は5大名家でもトップです。
その後継者に貴女が選ばれたこれがどういうことか
理解できますでしょうか?』
敷地に入られるという恐ろしさに震えが止まらなかった。
『そして、貴女は次期後継者にならなければなりません。
全ては、貴女のお祖父様のためにもです。貴女が断ると
言うならばこちらも考えを改める必要があります。』
恐る恐る顔を上げるとやっぱりにっこりと真意の読めない
表情を浮かべる秘書に警戒が強まる。
「何故、貴女が口を出すの?じいちゃんはあたしの意志を
尊重すると言ってたはずではないですか。じいちゃんの部下
である貴女よりあたしは立場が上」
『失礼ですが、貴女は勘違いしてらっしゃる。
私の主は貴女のお祖父様であって貴女じゃない。
口を出すのではなく絶対事項だと言っているだけです。』
じわりと鳥肌が立っていく。
「・・・嫌です。あたしには」
『なりません。貴女がどう思っていても貴女に選択肢
はありませんと言ったはずです。』
言葉が押しつぶされる。
『断る気で居るんですね?』
何も言えなくて拳を握りしめた。
『そうですか、ならば一ついいですか?』
「・・・はい」
出来る事なら早く帰ってくれないかな。
玄関の扉を開ける秘書に促されて家の
中に入った瞬間。
『それを断ればあの家はすぐに撤去ということに。』
頭が真っ白になった。
目の前に居る秘書の言葉が理解出来なかった。
何も言えずに、秘書に視線を向けるとにっこりと
笑うだけで真意が読めない。
『嘘だと思いますか?信用ならないと貴女は仰いましたね。
ならば、もし返答をする際にこちらの言う通りにしなければ
貴女の大事なモノ全て私の手で潰しましょう。』
畏れで支配する人だったのかと気付いた時には
もう遅かったと思い知ったのは次の瞬間だった。

