な、何か嫌な予感するなと思いながらユウヤ

を見つめるとユウヤが爽やかな笑みを見せる。

「ゆ、ユウヤ?」

「今度は俺がタクシードライバーな!

ヒヨリン、荷台に乗れよ。あ、でもスカート

だと冷えるよな?ちょっと、待ってろよ。」

こういうところ、ユウヤは意外としっかりしてる。

夏の時も崖から転がり落ちたあたしがアタフタしてたけど

ユウヤはしっかりしてた。

普段はどうだろうかその実力が輝くことはあまりない

ように見えるけど、ここぞって時は発揮してくれるんだね。

自分の上着を脱いで荷台に畳んで乗せる。

「えっ、ユウヤが風邪ひくよ?」

「俺は馬鹿だから風邪ひかねぇんだよ。」

「そういう理屈なのかな?」

ユウヤは優しい男の子だよね。

あたしはちゃんと知ってるから。

「ほら、早く乗れよ!」

「う、うん。じゃあ、遠慮なく。」

そう言うの気付く人はちゃんと気付いてるよ。

藍色に染まった空は星のキラメキでいっぱいだった。

「どこから、行くか?」

「えっと、本屋さんから!」

「ラーメンは最後な。」

「うん、ユウヤ寒くないかね?」

ユウヤの漕ぐ自転車は軽快な滑り出しだった。

風がひゅるりと通っていく。

「ヒヨリン、落ちんなよ?」

「ユウヤは安全運転じゃん。」

「エコに気遣った俺の運転技術だぜ!」

「どこが、エコに気遣ってるの?」

「ば、バイクは美男たちが洗車するって

煩くて・・・」

「ユウヤってよっちゃんたちに尊敬されてるのか?」

「そりゃ、俺盛り上げ役だからな!」

ユウヤのお陰で少しだけ気が晴れたよ。

あたし、まだまだ頑張れそうだ。

強くなって今度は恩返しするからね。

鶴だって恩返しするんだからあたしだって

恩返ししてあげるよ。

いつか、ユウヤが挫けそうになったりしたら

颯爽と現れてあげる手配をしなくちゃだな。