だから、お願いだ。

その時が来てもあたしが動揺もしないような

強さを頂戴。強い人になりたいの。

「それなら、俺も」

「いいよ、ユウヤが一緒だとゆっくり選べないし。」

「えっ、でも・・・」

「じゃあ、こっちだからバイバイ。」

自転車の荷台をグインと押してユウヤに

背を向けて歩き出した。

「あ、おいっ。ヒヨリン!」

“優しい”みんなを利用するようなことは

絶対にしたくないから迷惑はかけない。

大好きなサユにも何も言わないよ。

大体、不良メンバーズはどんな顔するかな?

あたしが一ノ瀬の跡継ぎだって聞いたら

腰抜かすんじゃないか?

誰か分からない人が婚約者か。

ホテルで会った不思議な人みたいに良い人だったらいいな。

結婚なんてするつもりなかったけど、あの口調

だと確実にあたしの思い通りにはならない。

好きって気持ちもないのに結婚って出来るのか?

政略結婚って今時あるのかと思ってたけど、

これはそれを検証出来そうだ。

自分の身を挺してそれを確かめられるとは

世も末恐ろしい世界だ。

伯父様は幸い恋愛結婚って話を聞いたけど、

それは出来そうにないだろうな。

まぁ、しょうがないのかもしれないな。

あたし感情すらよく分かってないし都合が良かった

と思えば大したことないだろ!

相手の人には悪いけど、むしろあたしを見て

断られるだろうよ。

よしっ、そう考えれば頷ける。

嫌だな、どんなに言い聞かせても納得しない

自分が居るのは心苦しい。

どうして分からないんだよ。

もう、決めたことでしょ?

いつまで、ウジウジしてるの。

そんな格好悪い姿誰かに見られたらどうするの?

強くなりたくてもまだまだ発展途上なあたしは

中途半端な強がりばかりを吐き続ける。