いつまでも、ウジウジしてたくない。

割りきって戦うしかない。

嫌だって言ってもしょうがない。

あたしがやらなきゃ家が壊される。

それなら、迷ってる暇なんてない。

とことん戦ってやるわ。

あの、秘書にだって怖がったりしない。

あたしは1人じゃ無い。

母さんだって、父さんだって、お兄ちゃんだって、

兄ちゃんだって、大和さんだって付いてる。

大体、秘書に何が出来るんだ!

じいちゃんの差金だったとしても、

あたしは絶対にそんなものに屈したりしない。

「ヒヨリン、やっぱり何かあったのか?」

ボーッとしてたせいかユウヤに視線を

向けられてドキリと心臓が音を立てる。

「何もないよ。」

あたしとみんなとではやっぱり世界が違う。

どんなに近くに居ても同じ世界に入れない。

それが多分距離っていうやつなんだろう。

みんながこっちに来るなって思ってること

なんてお見通しで、本心はあたしを仲間だと

思ってないのかもしれない。

「そうか?」

だけど、今になると分かるんだ。

あたしもある程度距離が欲しくなった。

平行線の思いは絶対に交差しない。

一ノ瀬がどれだけ大きな名前か背負わされる

その重みにみんなを巻き込むわけにはいかなくなった。

継ぐと決めた思いが、また一段と強くなった。

それはつまり必ず別れが訪れることを知らせる。

その時が来たら迷惑をかけない内にこっそりと居なくなろう。

一ノ瀬は大きすぎるからあたしの手にも余る。

心の準備がある分、別れは辛くならない。

あるんだって考えれば必要以上に関わらなくていい。

「うん、あ、ユウヤ。あたし、本と毛糸買うんだ。

だから、先に帰っていいよ。」

例え、それが予想外に起こっても迷わないように

強く残してあたしの宝物にする。

どんなに辛いことがあってもきっと乗り越えられる

力になるはずだから。