お兄ちゃんのように頼りがいがあるわけでも、
兄ちゃんのように人や動物から好かれるようなわけでもなくて、
父さんのように自由に放浪したりとかも考えられなくて、
母さんのように逞しいほど強いわけでもなかった。
だけど、ウジウジして情けないにも程がある。
シャキッとしろよって目を覚まされたようなものと同じだった。
2人に背中をポンっと押されてようやく分かった。
認めなきゃ駄目だ、自分の弱さから目を逸らしちゃいけない。
「す、少しだけ」
あたしに欠乏しているものはまだある。
だけど、一番欠乏してるのは自分の弱さを認めなかったことだろう。
バッターBoxに入ると無我夢中で打ち続けた。
どうやら、ストレスは極限まで溜まっていた。
クリスマス・イブ前のせいかお客さんは誰一人居なくて、
フルスイングしても誰も見てなくて恥ずかしくもなくて、
ただスイングするだけでここまでストレス解消出来る
とは思いもしなかった。
無言でスイングばかりするあたしに2人は黙って、
付き合ってくれたんだと思う。
何も言わずに悟ってくれたのはきっと2人の優しさだ。
ほんの少し涙が滲み出そうな気配がした。
ただ、強くありたかった。
それだけが、あたしの意地を強くした。
昔から、自分のことを話すことが苦手だった。
気持ちの表出しが出来ない子だからって、
大人には理解されにくい子どもだったんだろう。
思い通りにならない世界がどうしようもなくて、
いつからか傷つかないようにしてたんだと思う。
それが、あたしの妄想世界の発祥だと言える。
「あはは、全然当たらないや。」
力なく腕を振り下ろすと歯がゆさにバットが
鈍い音を出しながら落ちた。
「オメェさ、やっぱり何かあったんだろ?」
ベンチで項垂れた慶詩と目が合って、
ドキッとしたのも束の間のことだった。
「別に言いたくなきゃいいけどよー、前にも言ったろ?」
“七面倒なことグダグダ考えてねぇーでさっさと諦めて、弱音
吐くことが恥ずかしいことだとは限らねぇんじゃねぇーの?”
あれ、実はすごく嬉しくてホッとしてた。
本当はずっと頑張らなくちゃいけないって決め付けて、
あたしなりに正当化して悪循環だったんだと思う。

