手が震えるのを止めるのにだいぶ時間がかかった。

誰も居ない真っ暗闇の廊下はまるでこれから

突き落とされるのではないかと思われる茨の

道と同色な気がしてしばらく立ち上がれそうになかった。

こんなことなら、何も知らなきゃ良かった。

みんなと楽しい時間を過ごせば過ごすほど怖くて

しょうがなくなるんだ。

手放したくなくて藻掻けば藻掻くほどに遠い存在だって

理解しなくてはならなくなる。

いっそのこと、何も知らない方が良かったなんて

今更過ぎて馬鹿みたいだ。

誰も助けてはくれないのに、これから自分で立ち向かわなければ

ならない巨大な敵の挑発にこれほどダメージを負わされるとは

あたしもまだまだ大したことない女だ。

駄目だ、こんな顔では気分を害するに違いない。

少し、頭を冷やしてから帰ろう。

丁度、コートとマフラーしてきて良かった。

学校の周りを走ってウジウジ虫を追い出そう。

このままでは、気まずくてしょうがないもの。

何も考えずに走ってればきっと少しは良くなる。

耐えろ、あたし!しょげてたら相手の思う壺だ。

心が砕けそうで、何が何だか分からなくて

どうすればいいのかすら分からない。

涙、こんな時でも流れないんだ?

可笑しいな、あたし人間じゃないのかな?

本当にロボットだったりして!

サイボーグだったらどうしよう!!

心は完全に砕けて塵になりそうなのにな。

そう言えば、雷の日以来泣いてないか。

あの日はみっともないところを見せてしまったな。

ちぃ君、きっと驚いただろうけど何も聞いてこなかった。

みんなも気付いてたはずなのにそっとしてくれた。

何で、あんなに雷が怖いのかよく覚えてないんだ。

いつから怖かったのかも曖昧な記憶で分からない。

ただ、父さんに慰められることが当然だった。

だけど、今思うとその時だけは涙が溢れてた。

ポーカーフェイスのあたしが何故か怖くて

泣いていたのは確かなことなんだ。

泣けたら本当に良かったよ。

こんな状況下の中で、何であたしは走ってるんだ。

普通なら、隠れて涙を流すところだろうよ!

それなのに、勇ましく走ってたら本当にロボットに

なってしまいそうだよ。