どうもありがとうと言ってからエレベーターに

乗り込んで最上階をまた目指した。

不思議なものでお金持ちの坊ちゃんって性格悪い

人ばかりだと想像していたからあんな人も居るんだな

と思った。不運な人かと思ったけど、良い人そうだった。

それにしても、大和さんこのホテルよく使うのか?

大和さんの仕事に関係してるのかな?

そういえば、母さんって何の仕事してるんだ?

昔は弁護士の仕事してたみたいだけど今は違うみたいだ。

母さん、頭いいし何でも出来る人だからこそ今何の仕事

してるかも分からないや。

でも、大和さんって何してるんだろう?

いつも日本に帰ってきては忙しいし、海外に戻っても

忙しそうに働いてるみたいだけど知らないや。

大和さんのこと何も知らない気がするよ。

今更、こんなこと思うのも変な話だ。

あたしのことは知り尽くされてるのに大和さんのこと

あたしは何かしてることはあったっけ?

大和さんが好きなものって何だったかな?

そういえば、ラーメンは塩味が好きだったな。

26歳でお兄ちゃんと1歳差で時たまお兄ちゃん

みたいだなって錯覚することもあるぐらいで、

すごく信頼してるけどあたしは全然知らないや。

最上階にエレベーターが到着するとフロアで

待っていたのかすぐに大和さんが心配そうな

顔をしながら現れた。

どこに行ってたんだろうと思ってたけど、

それは大和さんも一緒だったみたいで、

すぐに駆け寄ってきたと思ったらしゃがまれた。

「どこに行かれていたんですか?帰りが遅いからと

社長に聞かれて迷子になったのかと思ったんですよ?」

「ご、ごめんなさい。靴ずれしてフロントで絆創膏

貰ってきただけよ。伯父様に一声掛けておけば良かったね。」

大和さんの額に浮かび上がる汗はあまり見たことなかった。

「さ、探してくれていたんですか?」

「無事で何よりです。」

こんなことなら一言声を掛けておくべきだった。

大和さんに余計な手間をかけさせるなんて

あたしは酷いことしてしまった。

でも、大和さんはこんな時でも叱らずに

あたしの無事を喜んでくれるんだね。

そんな人、疑えるわけないじゃないか。