バイトが終わり、今まで短期間ではあったが
お世話になった店長夫婦と会話を交わした。
「日和ちゃんも紗友梨ちゃんも御苦労様。
すごく助かったよ。本当は続けて欲しいところ
だけど学業の方もあるからね。気が向いたら
いつでも遊びにおいで。」
本当に充実できた2週間を送らせてもらった。
きちんとお礼を言ってバイト先を後にした。
ロッカー室に向かって、制服に着替え直して
ため息を吐き出した。
「日和、父さんにはあたしから言っとくから。」
「えっ?」
「あの様子だと絶対にあんたのこと待ってるでしょ?」
だよね、恐ろしすぎて帰りたくない。
「晩御飯はあんたの家に持ってといてあげるから
あんまり遅くならないようにしなさいよ。」
まさに、サユはあたしのお姉ちゃんみたいだよ。
「うん、助かります。」
「はぁ~、あんたも大変ね。」
「いや、それほどでも。」
コートを来てサユと一緒に外に出るとキラキラと
星が夜空を照らし出していた。
「あ。」
お店を出てすぐに居るとは思わなかった。
「あんたたち、日和をあんまり遅くまで連れ出したら
駄目だからね。日和、風邪ひかないようにね。」
サユにマフラーをぐるぐる巻きに巻直された。
オドオドしながら歩を進めるとベシッとデコピン
攻撃をされて額を抑えながら顔を上げる。
「何してんだ、馬鹿。」
「ば、バイト・・・・・・」
「何で嘘吐いた?」
ち、ちぃ君に魔神が降臨してる!
「嘘ではないよ、資料集めはバッチリしていたもの!」
「じゃあ、何でバイトしてるって言わなかった?」
「それは、・・・・・ケーキ屋さんでバイトしてるって
言ったらちぃ君が目を輝かすのではないかと・・・」
「確かにそうだな。」
そら、見たことか!
やはり、あたしの選択は間違っていなかった。
「嘘吐いてないにしても黙ってたら傷つくよ。」
馨君がにっこりと微笑んで視線を落とした。
「ご、ごめんね、今後は気をつけるわ。
それにしても、最後の最後で見つかるとは思わなかったな。」
こういう偶然が何度も起きると不思議なものだ。
それは、まさに必然的に出会うようなものだった
みたいに思えてしまうんだから。

