コンビニを出ると伊織君がポケットに手を突っ込んだ。
「伊織君、寒いね、肉まん食べる?」
「いらねぇよ~、寒すぎる。」
伊織君が身を縮こませるのを横目にコンビニ袋から
肉まんを1つ取り出して極寒の手に温もりを与えた。
「それにしても、よく食べるよな~。」
「ふぉー、温かい肉まんとの交信!」
「お前ねー、呑気じゃね~の。」
伊織君感傷に慕ってるのかしら?
「やっぱり、肉まん食べたかったのか!?
言ってくれたらいいものを!!」
「はぁー。」
明らかなため息は人を傷つける凶器になりますからに。
コンビニの外はいつもより視線が痛かった。
伊織君を見る視線が一緒になってるのかもしれない。
ただ、平然としてる伊織君を横目でこっそり覗いた。
「伊織君って寒さに弱いタイプ?」
「んー?何だよ、俺と温め合いたいってか?」
「いや、誰もそんなこと言ってないっすよね。」
お、驚いた、ここに来てもそんなジョーク飛ばして来ちゃう?
この視線の中、伊織君が頼りだった。
目を瞑りたくなるようなそんな鋭い視線は、
事件が解決した学校でもよく遭遇した。
みんなに事務連絡をする時も感じてた。
やっぱり、あれは誰かが仕組んだことだったのかもしれない。
折角、みんな平穏に暮らしていた学校生活に影を落とした。
「あたし、寒いの駄目なんだ。冷え性で今も背中と
お腹にカイロを貼っているよ!」
「オメェ、おばちゃんかよ~」
「酷いなっ!寒さ対策を聞き込み調査と思いきや、
まさかの暴言だよ。」
本当に悔しいばかりだ。
あたしがそこまで足を掴むことが出来なかった。
「ねねっ、伊織君肉まん食べる?」
「・・・要らねぇって。」
伊織君ってマジでよく分からん男だわ。
色気ムンムン放出してるだけの男では
ないとは思っていたが、イマイチ何考えて
居るのかさっぱり分からない。
女の子にはだらしない割にちんちくりんな
あたしを置いてかなかったのもたまたまなのかな?
気が向いたから待ってやろうかな的な考えが
あったのか分からないが、一緒に歩いてても
いいのかなってふと思った。

