モンシロチョウがたくさん飛んでいる。

小鳥が羽を広げて今にも踊りだしそうだ。

《日和》

誰かが呼ぶ声が聞こえる。

耳をすませばよく聞こえて来る。

《・・・日和っ》

心配そうにあたしの帰りを待っている。

導かれるように目をゆっくりと開く。

真っ先に目が合ったのは困惑したサユの顔だった。

「・・・んぐっ、あれ?」

目を擦りながら横たわってる体に違和感を感じる。

「あ、あんたね!!自転車から転がり落ちるところ

だったのよ!寝相悪いんだから固定しとかなきゃ

駄目じゃないの!!」

ペシっとほっぺを叩かれて次第に視界がはっきり

してくると頭上は何かの気がそびえ立つ。

「虎さんは?」

「はぁ!?何言ってんのよ!」

「小鳥がサンバカーニバルは?」

「ちょっと、頭打ったの!?」

サユにペチペチほっぺを叩かれる。

「待ってなさい、今、ハンカチ濡らしてくるから!」

「えっ、いい」

体を起こそうとしたらグラッと視界が歪む。

パタリとベンチに引き戻される。

「あんたたち、しっかり日和を見張ってなさい!」

「サユリン、俺行きますよ!」

バタバタしている周りの音が遠くに聞こえてきた頃、

また瞼を閉じかけたところで額に手が添えられる。

温かくて優しくてあたしの知っている手。

「気分悪いのか?」

ベンチの近くにはみんな揃っていた。

心なしか心配そうに見つめられて、

クスッと笑みを零した。

「ちぃ君の手だったんだ?」

これまた、色白な手ですなー。

「ん?」

「ふへへっ、ムフフ・・・」

顔に力が入らなくて変な顔してるかもしれないや。

いつもよりへにゃへにゃってなる。

不細工な顔晒してたらどうか殴って下さい。

顔が変にニヤけてたら恥ずかしいな。

どんな顔してるのか見えないのが悔しいばかりだ。

ちょっと、締りが悪いのはご愛嬌です。