ガタンっと世界が崩れていくのはあっという間で、

車体が揺れたせいか夢の世界がガラスのように砕ける。

パリンっと音を立てて飛び散る破片を拾い集めようと

したらガラスの一面がそれを阻んだ。

いつの間にか闇が広がるそこに粉々になった夢の世界が

無残にも塵と化す。

風がそれらは散り散りにするとガラスの一面が消えた。

それを守るには無力でそれを壊すのは簡単だと

知らしめるかのようだった。

『――――――――おいで』

懐かしい声が聞こえて顔を上げると、

色白の手があたしを案内してくれた。

その温もりはどこか懐かしく切ない。

夢のはずなのに何故か“彼”に会ってるような感覚。

「“  ”さん、これは何かを伝えようとして

くれている夢なのですか?」

決して、顔も姿も現れず色白の綺麗な手だけが

そこに存在する。

ボンヤリと見えてきた光に色白の綺麗な手が

強く道を示してくれる。

どこも間違った道に行きませんようにと念じられて

いるようで温かい。

足元に蝶蝶が止まるのを見つめると急に飛び立った

羽の動きに視線を動かすと草原の世界に戻ってきた。

『・・・傍に居られなくてごめんね』

風のざわめきにかき消されそうなほど優しい声。

何故か、視界がボンヤリで先が見えない。

「分かっていますから、心配なんてご無用です。」

どうか、“彼”を幸せにして下さい。

こんな時まで心配して気にかけるほど、

優しい彼のことだ。

夢にまで現れるほど弱っているのかな?

色白の綺麗な手が最後の力を振り絞って、

『そんなに頑張らなくたっていいんだよ。』

風に靡く髪と一緒に攫われて消えた。

優しく包み込むようなノイズを残して、

あたしを抱きしめるような甘やかすような

言葉を残して。

これはあたしの見ている夢だ。

そうなって欲しいと願う夢だ。

カラカラに晴れた日差しが眩しく照らし、

草原に暖かさを運んでくれる。