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said:紗友梨
日和、何も言わないつもりなのね。
マコと田中が先に学校行くわと言って帰ったのを
横目に自転車から降りてもっくんに預けた。
「ちょっと、顔貸しなさいよ。」
日和がよっちゃんの後ろに乗ってぼんやりしている。
あの子、突っ走ると自分の限界にも気付かないで
頑張る子だからしょうがない。
その癖、止めようと思っても一度決めたら絶対に
止まらないんだから大変なのよ。
「サユリちゃん、何かいろいろ巻き込んでごめんね。」
「そんなこといいわよ。ただ、日和を傷つけた
んだから歯食いしばんなさいよっ!」
どんなに真っ直ぐで強いあの子だって、
儚げな一面があるの。
「サユリン・・・・」
「日和は強いけど、あんまり買い被らないであげて。
自分が何もしてあげられなかったことをすごく
後悔して足掻いて必死に守ろうとしたのよ。」
「えっ?」
「日和はそういう子なの。自分よりも他人のことに
必死になっていつも傷つくのはあの子の方。
あんたたちが忘れたってあの子は覚えてるって
言ったのよ。そんな優しいあの子の気持ちを弄ぶ
ようなことしたらあたしが許さないわ。」
「そんなつもりはなくて・・・」
「分かってるわ、日和のためだったんでしょ?」
マコに八つ当たりしそうになった時、受け止めて
くれたのと同時にそんなことを聞いた。
「日和のこと守ってくれてありがとう。」
こんな事件に巻き込まないように日和に
自由の制限をしていた。
あの部屋に居れば、目の届く範囲にいる限り
日和を守れるからってことだった。
修平と約束があるから帰らせて欲しいと
願った日和を突っぱねたのはそんな理由だった。
「結局、守られたの俺たちの方だけどね。」
それでも、日和のために走って探しに行った
ってマコが言ってたの。
日和に危険が及ばないように何か自分たちに
あったらとマコや田中にも言ってたなんて
聞いたら怒るにも怒れない。

