急にスルリと手首を掴まれてまた伊織君めと

思ったら黒髪の紳士がおひとり様で何とも

大人っぽい色気にドキっとした。

「君が日和ちゃん?」

「えっと、どちら様でしょうか?」

とてもお顔が美形だけど、色気が!!

「あー、やっぱり。俺はね、ただの通りすがり。」

「えっ!?」

ギョッとしながら手首にキスを落とされて卒倒

しそうになった。

「あはは、可愛い。でも、もうちょっと大人に

なったらいい女になりそうだね。」

白目を剥きながら口をパクパクしていると、

「大地さん、日和ちゃんでからかうのは止めて下さい。」

馨君のお知り合いなのかしらと紳士を見ると、

「えっ、伊織君タイムスリップなう!?」

よく見ると伊織君にそっくりな雰囲気だった。

タイムマシンがあったことに驚いて、

目を瞬かせていると紳士がガバッと抱きついてきた。

「ぐへっ、・・・・あの!」

「いい匂いして俺の好きな感じの子かな。」

な、伊織君にそっくりなことに騙されるなあたし!

大人伊織君に惑わされてどうする!?

「だ、駄目っ!ヒヨリンは・・その」

ナル君にグイっと手を引っ張られて体が

ナル君の腕にすっぽり収まる。

「あたしの意志は無視ですかい?」

まぁ、ナル君の方が落ち着くのだけども!

「息子たちが世話になったみたいで。」

スーツから煙草を取り出す仕草まで

伊織君と被ってしまうほどよく似てる。

「あ、いえ、本当に大したことはしてませんから。

えっと、伊織君のお父さんでしょうか?」

ドキドキしながら反応を待つと、

「そうだよ、どうやら今回の件で捜査の

やり方を変えるそうだよ。君って人を

動かせる力を持っているのかもしれないね。」

ライターで火をつけて煙草を咥えた。

えっと、ここに居るってことは警察の方では

ありそうだけども・・・何故か雰囲気は警察の

人には全然見えないや。