化粧室で用を済ませてレストランに戻ろうと

した時、化粧室に女の人が数名入ってきて

個室に逃げ込んでしまった。

やっぱりお金持ちのご婦人たちとはあまり

接触したくなかったんだ。

さっき、すごい視線の痛さを感じていたもの。

「ねぇ、あの一ノ瀬様ご覧になった?」

お、伯父様の話か!?

悪口か!?あん、ナメてかかったら許さんぞ!

あたしの伯父さんなんだから悪いところなんて

ちっとも見当たらないんだからな。

「やっぱり素敵なご容姿よね。一ノ瀬の奥様が

羨ましいわ。家の旦那とは大違いだもの。」

ぶっ、ちょっと待って。

伯父さん、すごい褒められてるではないか!

さすが、あたしの伯父さんだけあるよ。

「連れていた子ご覧になって?随分と若い

子だったように見えるけど、一ノ瀬は娘なんて

居なかったわよね?」

あ、あたしかい!

ど、ど、どうしようあたしが話題の中心に

なってしまったよ。

「そうよね。あの子、若いけど愛人だったりして。」

えっ!?何故そうなる!?

what!?what!?むしろ、愛人に見えるのが奇跡だ。

あたし、ちっとも大人っぽくないから小学生に

未だに間違われるんだよね。

街で風船配ってたら必ず貰ってしまうし、

まさかそんなあたしに色気というものが・・・。

ぎゃはは、それはさすがにないわ。

今の絶対伊織君に断固としてないって言われてたよ。

自分で言ってて悲しいけどないものはない!

「まさか、愛人に作らせた娘じゃないの?

一ノ瀬ってそういう話しをよく聞くもの。

一ノ瀬だけじゃないわ。この世界だったら

ありえない話じゃないわよね。」

そ、それは現実的なことなのか?

もしかして、見知らぬあたしの婚約者も

そういうことしちゃう人なのかな?

結婚には夢見てないけど、さすがにそんな冷め切った

夫婦にならなきゃいけないのだったら最初からお断り

しなくちゃよね!