使用人を下がらせる会長の様子を少し伺っていると、

会長が沈黙を破るように首を傾げながら声を掛けた。

「ところで、貴女が私にアポイントを取るなんて

珍しいこともあるのね。いつも、私が追いかける

立場だったから何だか不思議だわ。」

「急な用件で伺わせてもらいました。」

「そうみたいね、今日は自宅学習のはずなのに

どこで何をしていたのかしら?」

黄金色の日差しが窓から入ってくる。

外見の洋館を裏切らない部屋の家具の質の良さは

期待以上で素晴らしいものばかりだ。

棚に飾られている壺なんかもきっと高いお値段だろう。

「貴女のお力がどうしても必要不可欠なのです。

こんな時に限ってとお気を悪くなさらないで聞いて

頂けませんか?悪い話ではないと思うのです。」

一ノ瀬の何個かあるお屋敷にも行ったことが

あるのを思い出す雰囲気だった。

「はい、お話下さい。私は貴女のお力に

なりたいとこの間も言ったことを覚えているから

ここに来て下さったのでしょう?」

そんな日来ないだろうなとは思ったが、

人生何が起こるか分かったもんじゃない。

ウェーブの掛かった髪からはシャンプーの

匂いがして、ドギマギしながらもひと呼吸置いた。

「どうしても、彼らが犯人ではない証拠が欲しいのです。」

「あら?どんなお話かと思えば貴女自身ではないのね。」

「すいません、会長にこのようなことをお願いするのは

失礼を承知でお願いに上がりました。」

クッキーを手の上で砕いて口に入れると会長は

満面の笑みを浮かべた。

「いいですわ。貴女の望みを叶えましょう。生徒会

メンバーに声を掛けてみます。地区の会長にも掛け合いましょう。」

「会長さん!!」

「貴女自身が困っていると思ったら、他の人を助ける

ために頭を下げてきた時点で私の負けだわ。」

「あたしはただ、決意で動いてるだけなのです。」

「そんなことないわ、貴女のような人に会長

の任に付いてもらえると私も安心で受験に専念出来そうだわ。」

「はい、ですから、この事件が無事に解決したその暁には

生徒会メンバーに入ろうと思います。」

ペコリと頭を下げてゆっくりと頭を上げた。