千治が無表情のまま薄ら目を開ける。
「何だ、おめぇ寝てなかったのかよ。」
「寝れるわけないだろε-(ーдー)」
ボソッと呟くと立ち上がって冷蔵庫から缶コーヒー
を取り出してテーブルの菓子を手に取る。
「だろうな~、つうか、どうなってんだよ。
見張り全然居ねぇし、意味あんのかこれ?」
「形だけでも必要なんじゃないか?」
それにしても、退屈な時間だな。
ナルは未だに不安そうな顔をして、
窓の外を見ている。
素直で誰よりも言いたいこと言える存在の
ナルがここまで落ち込んでるとどうも間違った
選択をした気になってしまいそうだ。
その隣ではナルの様子を気にするユウヤが
菓子を片手にナルの頭を撫でてやってた。
「あ~、昨日の夜の約束あったのになー。」
煙草がないせいか哀愁漂わせてパイプ椅子に
座って足をブラブラさせる伊織は机に項垂れている。
「京、どうかした?」
「あの時、泣いてなかったなと思って・・・」
日和ちゃん、何を言われても表情変わってなかったな。
ムキになって宣戦布告なんてしてたけど、そんな
ことをさせるためにわざと捕まったわけじゃないのを
気付いてくれないかな?
京も折角仲良くなってきたところだったから、
気にかけてるんだろうな?
日和ちゃんが強くたって女の子だってことに
変わりはないんだもんな。
一生懸命、分かろうとしてくれるのは本当に
日和ちゃんぐらいだったから。
「アイツは頼んだって泣くような女じゃねーだろ。」
本当に申し訳が立たなくなりそうだ。
もし、このことで日和ちゃんが心を痛める
ようなことにでもなったら日和ちゃんの家族にも
サユリちゃんにも頭が上がらないな。
その前に、サユリちゃんには許されないかもしれないな。
途端に、コンコンとドアがノックされた。
「よっ、気分はどうかな?」
この人はいつも陽気に登場するよな。
だけど、この人のお陰で今まで助けられてる。

