***


said:馨



久しぶりに来たこの場所も随分と懐かしく感じる。

「ヒヨリン、大丈夫かな?」

「アイツのことはもう諦めろ。あれだけ言ったんだから

さすがにもう・・・駄目だろ。」

ナルの後に慶詩がやけに気が抜けているように会議室

の椅子に深く座り込んだ。

「しかし、あの様子じゃ首突っ込む気だったろう。

あの、お嬢ちゃん俺らの言いたいこと分かってねぇな。」

伊織が煙草ねぇなとジッポを弄る。

警察署に連れてこられたが、会議室に軟禁

されているのはある意味よくあることで、

悪さをするたびここに来るのが当たり前だった。

「ちぃー寝てるし!!」

ユウヤがテレビを付けるとニュースは俺たちの

ことで持ち切りになっていた。

“それは大丈夫だよ!一生後悔なんてするもんか。

みんなと友達になれたことはあたしの誇りだ。”

さすがに、その言葉の威力は凄まじいものだった。

日和ちゃんはきっと望んで俺らと出会ったわけじゃない。

話を聞くと、どうも相沢にハメられたようだったし、

最初の方だって嫌々だったのも分かってた。

それなのに、いつも無視せずに付き合ってくれたな。

2歳も年下のはずなのに、ずっと大人びて真面目で

そんな日和ちゃんをこんなことに巻き込みたくはなかったな。

「だけど、ヒヨリン警察に喧嘩売ってたし・・・」



“あたしが一緒に居るのは迷惑なのか?”


いつだって予測不可能な彼女のことだ。

今回もそんな簡単に身を引いてくれるとは限らない。

しかし、傍に居ないと守ってあげられそうにない。

一緒に居ますよって言ってくれた日改めて日和ちゃん

にはこの世界が似合わないって思った。

その癖、傍に居て欲しいと思うのは矛盾してるだろ。

迷惑だなんてここに居る誰も思ってるわけがない。

ナルが言うようにきっと誰も嫌われたくないだろう。

日和ちゃんはどこまでも真っ直ぐに向き合って

くれた女の子なんだからこれでも誠意を見せて

守ったつもりなんだよな。

“巻き込まない”これは俺らが決めたケジメだ。