紅茶をお腹に入れすぎてお手洗いに行きたくなった。
「ヒヨリン、着いてく!!」
「えっ、いいよ。お手洗いここから近いところにあるし、
心霊現象が起こらないか祈って頂ければ・・・」
すっかり、暗くなった校舎は先ほどの放送のお陰か
人気が全くなくてひんやりとしていた。
ナル君は最後の最後まで行くって言うもんだから、
かなり焦って土下座して勘弁して下さいと言った。
お手洗い待ってもらうなんて恥ずかしすぎる。
ナル君のお気持ちは嬉しいもののそれだけは
さすがに乙女としての意地があった。
お手洗いに行くとまさに3番目から花子さんが
出てきそうでひっと小さな悲鳴をあげながら
どうにか用を済ませて即効で手を洗ってハンカチ
を取り出した時、何故かさっきのオレンジ頭の
人の映像が過ぎった。
“オレンジの髪をした甘い香りが漂う人だった”
それを思い立った瞬間、何かがガタガタ崩れていく
ような衝動だった。
“俺はそういヤツが一番嫌いだ”
ガシャンっと心に何か突き落とされたような
そんな感覚に口元に手を覆った。
体育祭の終わりに白髪に近い髪色をした
いけ好かない変態が最後にあたしに言った言葉だ。
彼はもしかしてこんな日が来るのを想定していた
のかもしれないと思うと飛び出して走っていた。
どうか、間に合って下さいと神様に祈りながら、
きっと何かの間違いだって思考の中でぐるぐる
言葉は乱れていく。
部屋の扉を開けると最悪の予想が当たった。
どうして、こんな時だけひらめくのが遅くなる。
いつもだったら、問題を見た瞬間に答えは分かって
解くことが出来るのに、こんな時に限って役たたずな
あたしの頭脳を恨みながら居なくなった3人を想った。
誰も居なくなったいつもの部屋は予想以上に寂しすぎて
魂が抜けそうだった。
もしかしたら、ユウヤがお腹空いたとか言ってコンビニ
にお弁当でも買いに言ってるかもしれないって思いながら
そんなのはあたしの妄想に過ぎなかった。
帰ってくるのも、気がつくのも“遅かった”
みんな天才だっていうあたしの頭脳もこんなものだ。
本当に役に立たない応用の起点が利かない不便利さに
反吐が出て足元が崩れていきそうだった。

