頑張れ、あたし!歯を食いしばるのよ。

「何言ってんだ。そんなもん思ってたら最初から

傍に置いとこうなんざ思わねぇだろうが。」

「な、何で・・・・?」

あたし、何にも恩返してないよ。

そんなに可愛いわけでも美人なわけでもない。

色気なんてむしろどこに置いてきたってくらいないし、

女の子らしく媚びることも出来やしない生粋の江戸っ子よ。

「ん?」

「あたし・・・迷惑じゃないか?」

「お前、面白いから。」

オモシロイ!?面白い!?omosiroi!?

「ムカッ!!」

稜さんと同じことを親子揃って言うな!!

激しく、目眩がしてきた。

ここは、どこだ?あたしは誰だ?

※現実逃避に彷徨っています。

「面倒事に巻き込まれて厄介なところあるけどな。」

慶詩に助けられた覚えは・・・ちょっとあるだけだ!

「ちぃー君、鼻水付いたすまぬっ。」

「んー、好きなだけ付けろ。気にしねぇ。」

「き、気にしろ。あたしがクリーニングに出して

置くから安心したまえ。」

クリーニング屋のタマ子さんとは仲良しなのよ!

「お前こそ、今更逃げようなんて思ってみろ。

手放す気なんてさらさらねーから覚悟しとけ。」

ちぃ君の顔が見えない今その言葉は魔力だった。

視線を感じながらも口元がニヤけて不始末に

なりそうで、ブレザー被ってて良かったと思った。

「だ、ダッハハ、あたしの良さに気付くとは目ざとい!!」

「てめぇはさっきまでしょぼくれてたろうが。」

「よ、良いのよ、あたしの魅力に気付いたのだからな!!」

「日和ちゃんの転換の早さはきっとあのお兄さんが

影響していると思うんだよね。」

えっ、馨君よしてよ。

あんな変わり種の兄ちゃんと一緒にされるのはご免よ。

しかし、面白いとは・・・一体あたしのどこが!!

いくら、天然だからって女子を褒める言葉が面白いとは

予想外もいいところだわ。

せめて、誰かあたしの容姿褒めてくれ!!

う、うん、もう諦めるべきなのね。

さらば、容姿を褒められるという妄想よ。

いつか、褒めてくれると願ったあたしの夢は

儚く散ったのでありました。