「ったく、おめぇは毎度厄介事の中心にいやがって

こっちの身にもなりやがれ。」

突然後頭部を激しく小突かれて前のめりになった。

「あ、慶詩!ヒヨリンに血が付いちまうだろ!!」

「ナル君のプリチーなお目々にもアイマスクを

付けるべきではないか!!今すぐ、鞄から取ってくるわ。」

※ただ、現状が見えてないので自分の置かれている

状況を理解していません。

「日和ちゃん、今シュールな状況なんだけど。」

「俺は血とか見慣れてるから心配すんな。」

「だけど、ヒヨリンに何もなくて良かったな。」

「あたしの心配して来てくれたのか?」

それは意外な言葉だった。

きっと、あたしが逃亡してると思われてた。

だから、連れ戻されるのかもしれないと思ってた。

しかし、何故心配されてたんだ?

「あたしは日頃恨みを買うような粗末はしてない

はずなんだが、これは無差別テロなのか!?」

「うん、とりあえずそういうことにしといていいよ。」

馨君が説明をすっ飛ばしている。

「あの、1つだけ聞いていいか?」

心にモヤモヤが現れて消えない。

さっきからずっと聞きたくて聞けなかった。

ううん、少し聞くのを戸惑ってたのかもしれない。

「ん?どうした?」

馨君の声はやっぱり落ち着いていた。

2歳しか違わないはずなのにずっと大人びている。

「みんなはこういうことが普通なのか?」

血だらけの海を前にしても平然としてて、

むしろあたしの心配をしているほど余裕がある。

あたしなんてさっきから落ち着けないのに、

こんなに大量の血液を前にして腰を抜かすほど

チキンな自分がただの弱虫なのかもしれない。

「えっと、その変な捉え方をしないでくれ。

ただあたしはこういうのには慣れていなくて・・」

この先、みんなの友達で居るともっと悲惨な

現状を見ることになるかもしれないのかなという

不安が頭を過ぎってスカートの裾をギュッと掴んだ。

爪が食い込んで痛くなるほど強く。

100%怖くないよって言い返せなくなる日が

一番怖いと思ってしまった。