「どういうことだ、横君。説明をしに行った
もんだと思ってたが本当にイチャついて・・」
「上條さんそんなこと言ってる場合じゃない。」
中塚が眼鏡を外して顳かみを抑える。
「困ったことになりましたね、今回の想定区域は
星鈴を中心とした圏内10㌔前後」
「それって・・・・」
「この学校の生徒全員が被害対象者だ。」
頭が真っ白になる前に足が先に動いてた。
それは俺だけじゃなかった。
「上條、お前はここの指揮を取れ。」
ちぃーがそう言ってることも知らずに廊下を駆け抜けた。
俺よりも先に走ってるのはナルで暴走しかねない。
後ろを振り返ると、馨がケータイを片手にして走ってる。
そのすぐ後ろには京が馨を追いかけるように走る。
それから、慶詩があの馬鹿と言って走ってる。
それを追うように伊織と並んでたちぃーが急に
視界から消えた。
「お、おいっ、千治こっちだって聞いちゃいねぇ。」
慶詩が呆れた顔をするも全員何故かちぃーを
追いかけることになっちまった。
「ちぃーさん、何か確証でもあるの~?」
「何となく。」
1階に着くと迷わず体育館裏に走っていくちぃーに
みんな無言で追っかけた。
体育館ではバスケをしてる部員が不思議そうに
見ていただろう。それも当然の話かもしれない。
「俺、こんなに走ったのあの時のヒヨリンが
北地区入ったとか言った日以来かもしんねぇ。」
その後にも随分ヒヨリンには振り回されっぱなしだ。
「ユウヤ、お前ジョーク言ってる場合じゃねーだろ。」
「そういう、慶詩が・・・」
この嫌な予感が的中さえしなければ。
もしも、視界に映るのが雑草に生い茂る
平地でヒヨリンとサユリンは居なくて、
いつものように振り回されただけなら良かった。
それで、戻ったら帰ってたよってもっくんが
言ってくれることを俺は望んでた。
けど、そんなの次の瞬間に全部吹き飛んだ。
血の海の中で膝を折って震えるヒヨリンの背中を
見つけてしまった。

