だけど、そうか。

あたしと出会うまでの彼らはよく事件を起こしていたのか?

「お願いよ。悪い話じゃないと思うわ。

よく考えておいてくれないかしら。まだ時間はあるわ。」

「でも、あたしには・・・」

あたしにはそんな約束をしてしまって良いのか分からない。

「大丈夫、貴女のお家柄は少なくとも知ってるわ。」

「えっ!?」

言葉が喉に絡みついて出なかった。

どうしよう、こんな身近に一ノ瀬を知る人が居たって言うの?

「だからって、周りに言いふらしたりしないわ。

あたしも同じような家柄だから分かるの。」

「同じようなとは?」

「ええ、あたしの家は貴女のところと違って

そこまで名の知れたところじゃないわ。」

「どこなんです?名前を聞けば・・・神代

確かそんな苗字でしたか。」

神代と言えば知る人ぞ知る超がつくほど名家の

お嬢様がどうしてこんな平凡てんてくりんな学校に居るんだ!

「神代は父と兄の名前よ。あたしは差ほどのこともしてないわ。」

「いいえ、そんなことないわ。神代と言えば優秀な

弁護士が居るって母さんが言ってた。」

「そうね、貴女のお母様の名はこの世界じゃ有名だわ。

あたしの世界で一番尊敬しているお方ですの。」

そうだ、弁護士を職業にしていた母さんはその美貌に

負けぬ仕事の出来た女だって父さんが自慢げに話してた。

「だから、立花さんっ!あたしは貴女の味方です。

どうか次期生徒会長に」

「日和、見つけたわよマコ!!ってあんた懲りもせずに

まだ付きまとってたのね。」

ああ、何でもっと静かな放課後を過ごせないのだろうか?

サユと会長が今にも噛み付き合いしそうなところを、

マコ君がオロオロと困っている。

「会長さん、その件しばらく保留にして下さい。」

「ええ、ただ貴女になら任せられると思っただけなの。」

にっこりと微笑みながら会長さんは去った。

ほんの一瞬の出来事だった気がするのに、

随分と疲れたのは走り回ったせいなのかそうでないのか

すら分からなかった。

ただ、母さんを褒められたことに胸を誇らしげに思えて

自分のことでもないのに嬉しく心地良かった。