―――そして、一週間後―――
一言挨拶をするのを忘れてしまっていたな。
空港で仕事用のケータイを開くと早速未依
さんから着てるな。
『はい、もしもし?』
心地いい低くもない高くもない温かい声。
「日和様、大変申し訳ありません。今、
お時間よろしいですか?」
『えっ、あわわっ』
どこに居てもどうかお変りになりませんように
ただ貴女のお傍に居ることが出来ないことは心残りです。
『 大和さん、あたしどうしても気になることがあるんです。』
彼女にしては珍しいことだった。
「何でしょう?日和様のお力になれるのなら私の
力をお使い下さい。」
そのためならどんなことでもするつもりですよ。
『あのね、今はきっと勝負に出る時じゃない。
いつかやってくるその日が来るまでに準備程度に
調べて欲しいことがあるの。』
そう考える彼女のことだ。
ただ物事を考えずに言ってる内容じゃないことぐらい分かった。
「それは、一ノ瀬に関わることですね?」
薄々、あの日の秘書が怪しいことを理解していた。
そうでなければ、あれほど怯えるわけがない。
それまでも彼女があまり他人に関わる方では
ないことを朝陽さんから少々伺っていた。
だが、蕁麻疹があんなに悪化したのはあの
秘書との接触があってから。
無邪気に笑っててもあの年で芯強くお決めに
なった決心は揺るぐものがない本物の覚悟。
『そう、一ノ瀬の秘書・・・お祖父さまの側近に
当たる秘書の素性を調べてくれない?』
そんな彼女の頼みとあっては断るわけがない。
誠意を持って尽くしましょう。
他ならぬ日和様の頼みごととは腕が鳴る。
「畏まりました。」
あまり口にしない頼みとあっては久しい。
気の強い彼女のことだから頼んだって頼られない
と思っていたが、少しはあの日からよりも信じてもらえる
人になれただろうか?

