飼われて居るみたいか。
本心で彼女に忠誠を誓ってるのだからそんな
主従関係と一緒にされるのは不愉快だ。
「坊ちゃんって言うなっ!」
「これは失礼しました“透真様”でよろしいですか?」
「お前、絶対性格悪いだろ!」
「どうでしょうね。では、失礼します。」
「会わないで発つのか?」
それにしたって彼の勘の鋭さは侮れないな。
「そうですね、時間がなければそのままお電話
を一本入れて発ちますが。」
「そっか、じゃあ気をつけろよ。」
彼もまた立花家の一員なのか。
そもそも立花と言う名は未依さんの実家のものだと
話していたか。
未依さんから家族の話は聞いたことがない。
今の家族以外の話は殆ど話さないから、
聞ける機会なんてないだろう。
立花家を出ると向かいの家から永瀬家の家主が
出て来て、手を振ってきた。
「やぁ、君は未依ちゃんのえっと何だっけか?」
「秘書の佐伯です。あまりご挨拶が出来ず失礼
をしました。日頃、日和様、透真様がお世話に
なっていると聞いてます。」
「ああ、そんな畏まらないでくれよ。俺は
そういうの得意ではないから。」
「すいません、ですがお許し下さい。」
「いや、そうだよな。いきなり話し方
変えろって言う方が可笑しな話だもんな。
だけど、家も好きであの子たちのこと
心配してるだけだから気にすることはない。
朝陽は元気にしているのか?」
「ええ、元気にしていますよ。」
「そうか、たまには顔出すように伝えて
おいてくれないか。」
「畏まりました。」
「あなた、玉ねぎ買って来てくれる。」
遠くから聞こえる声に永瀬家の家主が
振り返って返事をするのを見るとこちらは
平和そうな家族で何よりだった。

