さて、そろそろ彼女が帰る前に帰ろうか。

「大和、ひーちゃんをよろしく頼むよ。」

「いきなり、何です?」

「多分、兄貴からも頼まれてんだろうけどさ

俺からも頼むよ。ひーちゃんのこと守ってあげてくれ。」

きっと、彼女は平気な顔をするだろう。

どんなことがあっても表情が崩れることはない。

弱音を吐くような優しい子でもない。

まして、自分から手を伸ばして助けなど求めない。

そんなことも出来ずに馬鹿にするなと振舞うだろう。

俺のお使いしようと思った彼女はそういう子だ。

「いいですか、俺なんかに頼るなんて。」

「何言ってんだよ、大和じゃなきゃこんなこと頼まない。

一ノ瀬のことで頼れるのはお前一人だけだからな。」

「頼まれるよりも前に私が生涯忠誠を誓うのは日和様

ただ1人以外にありえません。」

あの日から決して揺るがない。

彼女への忠誠心に誓って。

「主人の身を守るのは当然のこと。」

「そう言うと、ひーちゃんがお前を飼ってるみたいで

何かヤダな~。」

「お言葉ですが、貴方も他にやらなければならない

ことがあるからこの地に戻られたのでしょう?

呑気に遊んでる場合ではないはずです。

機会が当然にあると思ったら足元を救われますよ。」

「たまに、厳しいこと言うよな。ひーちゃんには

甘々なのに酷いよね師匠。」

肩に乗っているインコに話しかける姿を見て目眩がした。

「そろそろ時間なんで帰りますよ。」

「え~、ひーちゃんに会って行かないの?」

「お元気そうなら何よりです。」

「ひーちゃん、大和に会いたがってるのに。」

「それは光栄ですね。またの機会にさせてもらいます。

これから、少々約束の商談を抱えておりますから。」

「釣れない男だね~。」

「貴方ほど暇ではないんですよ。」

「出た、ひーちゃんの前じゃないと毒舌な男に

なるんだよ師匠怖いね~。」

「少々、口が悪くなったのではありませんか“坊ちゃん”」

肩をピクリと揺らせて嫌そうな顔をする透真様。