親子は似るものだというが彼は一番似てそうだ。
「な、何だよ、俺そんな気ないよ。
お、男だよ?彼女いるし悪いけど」
「何を仰言いますか?」
そして、思考が彼によく似ている。
日和様も彼によく似た思考回路なのかたまに
上の空になっている。
「だ、だよな。俺、お前は兄貴以上にモテると思うもん。
男なんて興味ねぇよな。おい、そう言え!」
「何を勘違いされているのか分かりませんが、
私には日和様以外に優先するものなんてありませんよ。」
彼女と出会って今までその意志を変えることはなかった。
「何でそこまでひーちゃんに尽くす?」
まだ小学生だった彼女を守ることを誓った。
初めはそんな期待するほどのような子で
なければこの仕事は降りようと思ってた。
こんな近くで彼女を守ることが正しいか
それこそ部外者の俺が割って入ることか。
迷いがなかったわけではないが、出会った
その一瞬で決心がついた。
「日和ちゃんは俺の生きる希望ですから。」
光を見失いかけた世界でぼんやりと見つけた。
「やっと、言葉崩れたな。」
「すいません、スイッチ入るとこうなんで。」
「ひーちゃんも自分で分かってるか分からないけど、
結構言葉崩れるんだよな。」
敬語かと思ったら急に親しげになったり、
彼女には人を振り回す素質があるんだろう。
それはきっと未依さんの遺伝だ。
「俺は大和のこと疑ってるわけじゃないけどさ、
ひーちゃんが一ノ瀬継ごうとするのは誰かの思惑
だとしか思いつかない。じいさんは無理やり継がせよう
としなかった。俺の時も兄貴の時も。」
「そうですね、会長がそのようなことをするとは思えません。」
「何か、知らないよな?」
「知ってどうなさるおつもりですか?」
「ん!?知ってんのか。教えろ!!!」
「いいえ、存じ上げていません。
ただ、それを知ったところで透真様がどうなさるか
聞いただけのことです。」
あの日の彼女の疑い深さからしてその場に居合わせた
秘書が何か知ってそうだが、彼女がそのことを口に
したことがない以上俺が首を突っ込んでいい問題でもない。

