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said:大和



――――遡ること1週間前――――


日本に残留していたのは他でもない朝陽さんに

頼まれた調べ物をしていた。

『大和、悪いけど周りにバレないように調べて

欲しいことがある。』

久しぶりにニューヨークに帰ってきた朝陽さんに

そう言われて日本に帰国した。

あの人の考えてることは全く分からない。

「なぁ、大和、あの日ひーちゃん連れ去って

どこ行ってたか教えろよ!」

「ですから、お茶に誘っただけです。」

「なっ、俺に隠し事なんて通用しないんだからな!!」

「透真様、お声が大きいようです。」

彼を侮っているわけではなかったが、少し

勘が鋭い上によく分からない人だ。

そもそも、立花家の家族が変わり者が多い。

「ズルい、俺もひーちゃんとお茶茶したかった。」

「でしたら、お誘いしたら良いではないですか。」

「ひーちゃんはコーヒー淹れるの達人レベルだよ。

家でささっと作っちゃうよ。」

「そうでしたね。」

彼女は何でもかんでも自分でやろうとする。

いつだって、彼女が弱音を吐いたことはなかった。

その強さに子どもとは思えないと感じた。

だから、彼女がバリスタレベルのコーヒーを淹れることが

出来る理由を知った時改めて彼女には叶わないと思い知った。

彼女の淹れるコーヒーはお店に並んでるものよりも美味しい。

どこで習ったのかと聞けば自己流で覚えたそうだ。

「ああー、大和のせいでひーちゃんのコーヒー飲みたく

なってきたじゃん。早く帰ってこないかな。」

「すみませんでした、私の淹れるコーヒーで我慢して

頂けませんか?」

「いいよ、丁度ゆっくり話したかったし。」

あどけなく笑うと朝陽さんにそっくりにも見えた。

未依さんはあまり笑ったことはなかった。

朝陽さんほどこの家族で表情がコロコロ変わる人は居ない。

あの人は素直すぎて大人には見えない。

掴みどころがなくて自分に正直に生きている

その姿は誰よりも自由な気さえした。