随分と長い年月が経ったと思う。
たった6年のように見えて長い6年の間大和さんは
変わらない優しさであたしを優先してくれた。
母さんの秘書である今も何も変わらず出会った時から
大和さんは優しくて完璧で海外に行ってる母さんや
放浪の旅を続けてる父さんよりもきっとあたしのことを
よく知っていると思う。
母さんはこのことを知っているんだろうな?
大和さんが仕事を終わらせて帰国してきていることなんて
知らないはずがない。むしろ、大和さんに仕事ばかり押し付け
て動けなくさせたいだけなんじゃないかとも思える。
母さんはあたしが一ノ瀬グループの後継者になることを
すごく嫌がってるから、どうにか阻止したいんだと思う。
いつもあたしのために長い間飛行機に乗って、
飛んで帰ってきてくれる。すごく疲れるはずなんだ。
海を超えて何時間も座って疲れないわけない。
その間もきっと仕事してるだろうし、ピンチに
なると駆けつけてくれる大和さんはやっぱりお助けマンだ。
「明日は社長自らが予約した会員制のホテルで約束
されていますが、広いですからくれぐれも迷子にならない
ように私の傍から離れないで下さいね。」
にっこりと笑みを浮かべる大和さんに、
はいと返事をする。
そうか、ホテルとか行くのは中々ない。
迷子になったらそれこそヤバイよね。
会員制ってことはワイングラスでウィースキー
飲んでるおじさんとかいっぱい居るのかな?
何だ、チミはとか言われちゃったりして・・・。
それじゃあ、変なおじさんか。
「日和様、やはり・・・」
フッと笑みを零す大和さんに自分の世界から一時
帰還を余儀なくされた。
崩された笑みでも爽やかな紳士は変わらず健在で、
素敵過ぎるから悪いところがどこも見つからない。
まさに、出来た秘書ってヤツだ。
「ご、ご、ごめんなさいっ!話は聞いてるんだけども、
いやこれは言い訳じゃないのよさ。えっと、えっと・・」
「責めてるわけじゃありませんよ。
貴女という人はいつも予想外なことをなさる。」
す、す、すいませんね。予想外な妄想してしまって!
大和さんもさぞ困っただろうね。

