ポツリポツリと温かい光が見える。
近所の家からの光だろうか。
少し頼りないように見えるその光が
近くを通るとすごく温かく感じる。
・・・・・ちょっと、寂しく思うのは何で?
黒い柵の門を開けて中に入ると自転車をいつも
の定位置に停めて、家に入る。
いつも綺麗にしている玄関に入ると玄関のすぐ
近くにあるリビングがカチャリと開いて大和さんが
お帰りなさいと笑みを向けて待っていた。
「た、ただいま帰りました!」
「学校の方は大丈夫だったんですか?」
「え、はい。えっと、今日は何をするんでしたか?」
委員会があると嘘を吐いてしまっていた。
心苦しいけど大和さんには言えない。
不良たちとわんちゃかしてましたとは口が裂けても
言い出せるわけない。
「オーダーメイドした服を用意しましたから、
そちらの方を一度着てもらっていいですか?」
スーツ姿に黒縁眼鏡で知的オーラが漂う大和さん
今日も素敵なほどイケメンです。
「あ、そっか。伯父様に会うのにいつもの服装じゃ
会いに行けないか。」
毎度、地味な服装しか持ってないから大和さんが
用意してくれたものなら失礼はないだろう。
伯父さんとは言え、さすがに一ノ瀬グループ社長に
会うのだから身なりは良くしないとか。
爽やかにそうですねと言う大和さんに鞄を
いつの間にか取られていた。
さり気なくするから大和さんには敵わない。
「リビングに入って、明日の予定を確認しましょう。
温かい紅茶も用意しましたから。」
リビングに移動すると'どうぞ'とミルクを添えた紅茶
を用意してくれた大和さん。さすが、大和さん。
あたしに砂糖は要らないということを良く分かってる。
カチャリとティーカップがテーブルに当たる。
ミルクを添えてくれたのはすごく嬉しい。
ミルクを紅茶の中にくるりと回して入れると
ほのかに優しい匂いが広がった。
コトリとティーカップを持ち上げて口に運ぶ。
大和さんの淹れてくれる紅茶はいつも美味しくて
あたしが好きな茶葉を知ってるし、どんな飲み方を
するかも知り尽くされている。
きっと、大和さんに隠し事なんて出来ない。
それほど、大和さんを信頼してきたからだ。

