母さんは父さんに比べると夜のイメージだ。
確かに、お月様のようにしなやかで美しく
澄ました人ではあるから納得はしてた。
『じゃあ、父ちゃんは太陽さんだね。』
家の家族で一番明るい人だった。
どんな状況でも馬鹿みたいに笑ってた。
母さんが海外に働き始めた時だって、
泣いたけど笑って送り出してた。
でもね、あたし今なら知ってるの。
お月様は太陽から光を貰ってるんだよ?
きっと、母さんが頑張れるのは父さんが
馬鹿みたいに笑ってるからだ。
『ひーちゃんには小さくてもいいから輝いて欲しいな。』
『えっ?日和輝けるの?』
幼い頃のあたしは本当に父さんとの夜道の散歩が好きだった。
『輝けるよ。ひーちゃんは今でも十分輝いてる。
父ちゃんの自慢のマイスィートエンジェルさ!』
『・・・・・・父ちゃん、日和天使さんじゃないよ。』
『ううん、ひーちゃんは父ちゃんやみーちゃん、朔と透真
にとっては天使なんだよ。』
それは父さんの口癖みたいだった。
今思い出すと本当に恥ずかしすぎて笑えない。
『だから、ひーちゃんがもっと輝けるような
子になったら父ちゃん嬉しいな。』
『父ちゃん嬉しくなるなら日和頑張るッ!』
あの頃のあたしはそんなことを言った覚えがあるな。
あの後、気絶させられるんじゃないかってぐらい
メリーゴーランドのように回って鼻歌歌う父さんに
今後無闇に父さんを喜ばすことを言うもんかと
子どもながらに決意した。
お星さまのようにあたしも輝けるかな?
誰かに照らされるというよりは自分で輝く
女になりたいとは思ってる。
『父ちゃんの愛娘だもんひーちゃんだって輝けるよ。』
もっと、上手に顔に出せたら良かった。
父さんみたいに喜怒哀楽がはっきりしてれば、
今よりもずっと自分を好きになれる気がする。
このコンプレックスばかりは簡単には直せそうにない。
まだ、輝けそうにないや。
父さんの願いいつになったら叶えてあげられるんだろ?

