だけど、いいのかなって気持ちが増殖していく。

知っていけば知っていくほど怖くなる。

別れがあると知って馴れ合っていくのは心が

砕ける思いだ。




“あの人”が最後に会いに来てくれたことを思い出す。

居なくなるなんて思ってもみなかった。

傍に居てくれることが当たり前だと甘えていた。

甘えていたからきっと愛想を尽かして居なくなったなら

納得出来るのに肝心なことは何も言わずに去った。

お別れがある出会いをこれから何度繰り返すんだろうか?

その度、あたしは何も出来ずに受け入れることをして

何の抵抗もせずにこのまま別れが来てもいいのか?

ほんの少しの我儘を言うと“あの人”と同じように

彼らとお別れするのは嫌だなって思う。

ただでさえ、サユと離れなきゃいけなくなることに

心が追いつかないのにどこまであたしから奪っていけば

気が済むのだろうか?

暖房のかかった部屋は乾燥して加湿器を付けた。

上昇していく室温にポカポカしながら下書きを

終えて日記を完成へと近付けた。

ううん、あたしが傍に居たら駄目だ。

みんなを巻き込んだりしたくない。

一ノ瀬なら平気で人を陥れるようなことだって出来る。

みんなが傷つくようなことされたらあたしも黙ってられない。

だったら、あたしが絶対に誰一人傷つけない。

みんなを必ず守って見せる。

そう心に誓ったじゃないか、忘れるな。

あたしがしっかりしないで誰が守るって言うのよ。

バシバシ頬を叩いて気合を入れた。

日記を書き終えたところで机にあったケータイが

鳴り出して表示された名前を確認して出た。

『ヒヨリン、今何してる?』

ナル君からはよく電話がくる。

前に電話をくれた日から毎日電話しても

いいかって聞かれて構いませんと言ってからだ。

「日記を書き終えたところです。」

『そっか、今日のこと書いたんだ?』

「はい、ナル君は何をしているんですか?」

こういう他愛もない話をしていると落ち着く。

『俺はな、今ユウヤとゲーム中なんだ。』

「えっ、そうなんですか?」

てっきり、そろそろ来てくれるものだと

思っていたが鞄忘れられてる!?

別に大したもの入ってないからいいけど、

それはそれでちょっと悲しいわ。

一夜を学校で明かすマイバッグ!!