あの日から、ずっと人前でこのサングラスを外す
ことはなかった。
それは、ただ単にこんな醜い醜態晒せないと思った。
千治がこれを俺に買ったのに1週間小遣い稼いで
いたのを知らせれたのは退院して稜さんと話してる
時のことだった。
「言うなとは言われたんだけどな、俺の倅にしては
可愛いところあるだろ?」
「はい、これ肌身離さず付けさせて貰ってます。」
「目見えなくなる奴はサングラスしてんだとか言い出してな。
伊織と馨も小遣い稼ぎに参加させられてたな。」
「違いますよ、紫外線は良くねぇって言ってた
んじゃないっすか。しっかりしてくだせぇ。」
「そうだっけか。」
豪快に笑う稜さんの抜けてるところは意外だった。
そんな大事な日のこと忘れた日はなかった。
サングラスは別に気にしちゃ居なかった。
慶詩たちにも見られたことも何度かあった。
だけど、親しい奴でもこの傷見せるのはごく一部で
それが何故かと聞かれても答えられそうにない。
ただ、気の許せるヤツじゃなきゃ駄目だって
思うようにはなってた。
――――――・・・・・
「笑ったりなんかしません。こんなあたしに
お見せいただいたこと光栄に思ってます。」
サングラスは俺の特徴だとか言われるようになった
のもそれからすぐのことだったな。
「そんな大したことでもないから。」
「いいえ、とんでもない。やはり、やっちゃんさんは
素敵なお目々をしていてイケメンだとは思ってました。」
「えっ!?」
「サングラス姿のやっちゃんさんは素敵ですが、
素顔見れて良かったです。」
「日和ちゃん、こんな醜い俺・・」
「カッコイイです。やっぱりやっちゃんさんは
サングラスだからこそ醸し出されるワイルド感が
魅力的ではあると思いますが、酷いなんて思いません。
むしろ、それは勲章みたいな気さえします。」
ああ、だから日和ちゃんみたいな子にいつまでも
傍に居てやってもらいたい。

