日和ちゃんは突然そんな告白をしてきた。
「えっ、あ。お兄さん2人居たんだっけ?」
ロサンゼルスに居るとかすごいよな。
次元が違うような気さえする。
日和ちゃんは鼻歌を中断すると視線を
戻して笑いかけた。
「とても自慢の兄なのです。優しくて頭が
良くて、カッコイイ良くてモテモテだった
と思います。しかし、鈍い兄でした。」
そういえば、最近はよく笑うようになった彼女。
ポーカーフェイスと言われ続ける日和ちゃんは
それこそホントに表情を崩す場面がない。
だから、自身の兄の話で自然と笑みを浮かべる
日和ちゃんはそれほどそのお兄さんが好きなんだろう。
「そんな兄によく兄の知り合いからアメリカの有名
大学の教授の研究に手伝いを頼まれます。」
そういや、夏にもそんなこと言ってたな。
「日和ちゃん、頭良すぎるって話を聞いたけどね。」
「そんないい訳ではありません、兄2人に比べると
一番馬鹿だと思います。」
そんな日和ちゃんは向上心のある子だ。
今時、珍しいぐらいプラス思考で諦めることを
知らない強い子だと思ってる。
「ロサンゼルスに一度来ないかと言われてます。」
それを言った日和ちゃんは相変わらずポーカーフェイス
で何を思っているのか分からない。
「ロサンゼルスって旅行に?」
「いいえ、しばらくそこで勉学に励まないかと
中学時代からずっと誘われてました。」
あまりにも次元の違う話に理解が追いつかなくなりそうだった。
「しかし、飛行機というものに乗ったことが未だ皆無
なのでずっと躊躇っています。本当のことを言うと
飛行機というものさえ乗れれば兄や母、父に簡単に
会いに行けるようにはなるんじゃないかと思っては
いるのですが、何分根性がなくて乗れないんです。」
長い睫毛を伏せて喋る日和ちゃんはいつも強気の
日和ちゃんとは違うような気がした。
「じゃあ、飛行機に乗れたら行っちゃうんだ?」
この子は意図も簡単にアイツ等から姿を消して
居なくなってしまいそうな危うさもある。
強い強いって言いながらなんて儚い存在なんだろう。

