とりあえず、遥か遠くに現実逃避をした。

いっそのこと頭打って気絶してやろうかなんて

考えてテーブルに頭をガンガンぶつけてたら

真っ青な顔してダンディーさんに止められた。

「ショックだったかな?」

「違うのです。ダンディーさんの秘密を知っても

あたしはやはりダンディーさんを悪い人だとは

どうしても思えないのです。」

知ってるよ、極道って悪い人たちのことだ。

テレビでよくナメたらイカンぜよとか言ってる

人たちのことだって分かってるんだ。

ダンディーさんの雰囲気が薄々そんな気もしてた。

だけど、怖いとか近寄りがたいとか拒絶するのでは

なくて、そんな感覚は可笑しいのかもしれないけど

どんなに考えても酷いことをするような人には見えない。

「えっ、極道っていう言葉を知らないわけないよな?」

「もちろん、知って居ります。ドラマに出演したご経験が

あるんでしょうか?」

「やっぱり、分かってない?」

「いいえ、存じ上げております。だけど、ダンディーさん

がどんな職業でもやはりダンディーさんはダンディーさんで、

えっとあたしが可笑しいのかもしれません。」

ちっとも、怖くなんかないんだ。

ホントならばここで怖がったりするべきなのだろう。

だが、しかし、あたしの感覚は可笑しいのかもしれない。

「怖いと思うのが普通だ。無理をして平気なフリをしなくとも」

「いいえ、怖いだなんて思いません。どんなご職業か

それこそちっとも分かりませんが、ダンディーさん

とお話して多少はどんな人なのかを知りました。

だからこそ、納得も出来たような気がします。

ダンディーさんはとてもカッコイイですからに、

あたしの想像を遥かに越した神の域ですね。」

口角を上げてニタリと笑った。

※精一杯の笑顔のつもりです。

「本当に君は変わってる子だ。」

キリッとしていたダンディーさんの表情が崩れる。

「そ、そうですかね?あたしは普通だと思っているのですが?」

し、しまったわ。

声が裏返っちまったじゃないの。

ちょっと、いやこんな恥ずかしいことあるのかしら!!

顔から火が出そうなほどに恥ずかしい。

なんてこった、オレンジジュースはさっき飲み干して

しまったのだ。あたしとしたことが!!

少しぐらい残しておきゃ良かった。