全力で忘れてもらいたいんだけども。
兄ちゃんが言ってたんだよね。
ひーちゃんは寝相見せないほうがいいよとかなんちゃら。
それって、多分あたしの隠すべきところなんだろう。
「き、記憶を失くせ!」
そんな隠すべきところを見られたとは油断してた。
もう少しかっちりしてた方がいいんだよね。
これからは、もっと隙なんて見せない方がいい。
隙があればいくらでも足を引っ張られる。
だから、隙なんて見せちゃいけない。
「日和ちゃん、無茶苦茶なこと言った?」
馨君、ごめんなさい。
すいません、記憶を失くせなんて言いません。
こ、怖いよ馨君!
怒らせちゃマズイ人ナンバーワンだ。
「寝不足なら早く寝た方がいいと思うけど、
日和ちゃんよく寝る子だってサユリちゃんが
言ってたから。」
サユにいつ聞いたんだ、馨君!
「大丈夫だよ、道端で寝たりしないから。」
そんなことはしませんよ。
「どうだかなー。」
け、慶詩は黙っていろ!
「それより、考え事してる時の日和ちゃんが心配
だなって思ってるんだけどな。」
馨君が困ったように笑うから首を傾げた。
「考え事?」
あたしそんなことしてたかな?
「自分で分かってねぇとかおめぇー何がしてぇんだ?」
そう言われてもね、本当にそんな気はないもん。
「妄想ばっかりも心配だなって話だよ。」
「うっ、すいません。自粛したくてもついつい旅立って
しまうみたいで・・・」
「いいんだよ。日和ちゃんが好きなことをして、
ただ余所見をしている内に事故に巻き込まれたり
しないかなってちょっと過保護だったかな?」
「いや、馨君の言いつけは守るよ!」
わざわざ心配してくれる心意気はきっちり受け取りました。
妄想してばっかりは良くない。
サユにもよく受ける注意事項です。
やっぱり、最近調子乗らないしボーっとしてたら
隙だらけで良くなかったよね。

