千治さんが目を伏せてため息を吐き出す。
「とりあえず、探す。馨、事務所の奴らにも
連絡して動ける奴らも探すよう頼めるか?」
「分かった、人手が多い方が効率はいいからね。」
馨さんが、ケータイを取り出して早速連絡を
し始めたところで千治さんが徐ろにズボンのポケット
に手を突っ込んでケータイを取り出した。
「ナルとユウヤは南、馨と京は東、慶詩と伊織で念のため
北、後はそれぞれ散って探せばいい。」
「ちぃーはどうするの?」
ナルさんの問いに千治さんがポンとナルさんの頭に
手を置いて口を開いた。
「西の方に残る。」
「ちぃー、1人で?」
「美男が居る。」
「他に誰か残る人?」
ナルさんの問いに一斉に手を挙げ出すメンツ。
この人の人気はどこから来てるのか。
そのオーラはまるで人を引き付けるもののような
そんな気さえする。
「そんなに要らねぇ。」
「えっ、でもちぃー1人だよ?」
「美男が居るだろうが。」
「ちぃー、よっちゃん好きだね?」
ナルさんの言葉に美男が赤くなった。
「もっくんは南に持ってくぞ。」
ユウヤさんの言葉にもっくんが、
じゃあなと美男の肩に手を置いた。
「じゃあ、百瀬は北だな。」
慶詩さんの言葉に肩を落とした。
今日に限って北に行くのか。
あんまり、北は好きじゃねんだよな。
空気が悪いというか、治安の悪さが
くっきりと浮き彫りにされた区域がどうも
苦手なところだが、もしかしたらヒヨリンが
北の連中に連れ去られたとなっては黙ってる
わけにもいかない。
北の奴らに捕まったらいくらヒヨリンでも奇跡は
二度も起こらない。
一度、捕まった時とは訳が違う。
今度は、一発殴られただけで済まされるわけがない。
『ももっち、その文書は読みにくくないのですか?』
ヒヨリンに漫画読ませてやりてぇーな。
だから、頼む無事で居てくれよ。

