自分でも驚くべき力を持ったと思った。

一撃で黒ずくめの男がノックアウトで

失神してしまったのだ。

そ、そんな力強く殴ってない!!

この人、絶対に演技だ。

あたしを驚かせようとしてるに違いない。

それで、油断させようって魂胆なのね。

そんな簡単に騙されないわよ!

※殴られた男の顔面にはくっきり殴られた

痕が残っているのに気付いてません。

つんつんとそこら辺で拾ってきた枝で

相手の様子を伺うことにした。

い、生きてますか?

あた、あたし、全然悪くないよ。

この人がいきなり襲いかかろうとしたんだ。

あたしは、無実である!

正当防衛ですからにと弁解の言葉を考える。

いや、絶対に演技だ。

なんて、迫真の演技なんだ。

ホントに気絶してるみたいだよ。

役者の勉強でもしてるのかしら?

こんなところで寝てると風邪ひきますよ

そう言おうとした瞬間、後ろから口を抑えられて、

強引に車に放り込まれた。

視界が反転してグルグル目が回った。

一瞬、窓の外スモーク硝子の空に

鳥が気持ちよさそうにパタパタと飛んでいく

映像が移ったが、すぐに気絶をした。

今の自分の状況を一度整理しようと思う。

これは、拉致だ。

もしくは、身代金目当ての誘拐だ。

あたしなんて誘拐してもたかが知れてる。

一ノ瀬と関係があることはあまり知られてない。

だから、ただの女子高生を拉致して何が

したいのかしらと考えを巡らせる。

えっと、人身売買なんてことにはならないよね。

そんなのSFだし、ありえないか。

あたしって、一応この物語の主人公だよね?

これで、登場終わったりしないよね!?

駄目よ、日和!プラス思考に考えねば。

こ、これは夢に違いない。

あたしの単なる妄想劇場だわ。

ムフフっ、悪い冗談だ。