その瞬間、立ち眩みがしてしゃがみこんだ。
やっぱり、気分でも悪いようだ。
ベンチに手を着いて立とうとした時だった。
黒ずくめの男の人が急に現れた。
ドクドクと心臓が鳴る中、自分の中でも
分かる危険が目の前にやってきたのだと
思って戦闘態勢を構える。
彼らと一緒に居るならばこれぐらいなことは
ありえる話だった。
体育祭の後にも現れたあのイケメン珍獣のように、
彼らの敵はたくさん居るだろう。
それを、一々いつも守られているようでは
一緒に居る資格なんて到底ない。
むしろ、守られるぐらいなら傍に居ない方がいい。
迷惑かけるぐらいなら何も言いたくない。
誰かに頼るなんてそんなこと絶対にしたくない。
強気とかそういうわけでもない。
結構、怖いなとは思っている。
まず、黒ずくめの人なんてそうそういない。
これは、一ノ瀬関係の誘拐とかって話もないわけじゃない。
どちらにせよ、今この空間に居るのはあたしだけだ。
よっちゃんが居なくて本当に良かった。
もしも、よっちゃんが居たらビビってたと思う。
だって、よっちゃんはヘタレだからこんな素性
の分からない人に向かって行けるわけがない。
ファインティングポーズで相手との距離を
一定の位置づけで交わす。
ベンチに転がるケータイは画面が開きっぱなしだ。
大きな声で誰かを呼ぶには頭痛のせいか酸素が
足りなすぎて言葉にも詰った。
腕を掴まれると思った瞬間に相手の男に
拳を炸裂させた。
ダディーに習っといて良かった。
最低でも変質者を撃退したことがある
程度の力を持っている。
あたしは誰かに守られるような女の子にはなれそうもない。
だって、こんな時普通は格好良く誰か来てくれても
いいはずなのに誰も来ない。
ということは、あたしがやるしかない。
つまり、戦えあたし!
全ての腕力を炸裂させるのだっ!!

